人を幸せにする料理。
ベストセラーとなり広く読まれた「一汁一菜でよいという提案」では、そんな家庭料理のスタイルが、やさしく寄り添うように書かれています。
しかしこのスタイルにたどり着くまで、著者・土井善晴さんの人生にはさまざまな葛藤があったのです。
この記事でご紹介するのは、「一汁一菜でよいと至るまで」という本。
料理研究家の父のもとに生まれた著者が、料理を軸に人生を歩まれてきた変遷が描かれています。
夫が料理人なので、
「あるある!」も盛りだくさんでした。
この本を読むと、
- 「一汁一菜」への理解が深まる。
- 料理人の仕事が垣間見える。
- 料理を通した海外との関わりを知る。
- 日本料理がどう発展してきたか分かる。
これからも関わり続ける料理のこと、深く知ることで視野が広がりそうですね。
詳しくみていきましょう。
- 読書年間100冊を継続中。
- 読書は紙の本で楽しむのが好き。
- ブログでは暮らしや食にまつわる本を選書中。
「一汁一菜でよいと至るまで」土井善晴さん
今回ご紹介する本はこちら。
どんな本?
- 著者:土井善晴(どい・よしはる)さん
- 定価:820円+税
- 出版社:新潮新書
- 初版年月日:2022年5月
- ページ数:240ページ
著者は大阪府出身の料理研究家、土井善晴さん。
先ほども少し触れた「一汁一菜でよいという提案」は20万部を突破するベストセラーに。
家庭料理を担う、多くの人の心に届いた証拠。
わたしも影響を受け、生活に取り入れているひとりです。
日々の料理に悩んでいる方、料理が苦手でつらく感じる方は、ゼッタイ読んでほしい本なのです。わたしもこの本に救われた過去があります。今ではこのスタイルを取り入れつつ、楽しみながら台所に立つようになりました。
そして今回の「一汁一菜でよいと至るまで」には、著者の料理人生が描かれています。
- 料理研究家の父のもとに生まれる。
- 海外での修行。
- 日本料理屋での仕事。
- 料理学校での仕事や料理番組の出演。
このように、料理とともに人生を歩まれてきた著者。
その中でさまざまな出会いや悩み、葛藤があったからこそ、「一汁一菜」というスタイルに至るのですね。
道のりをまとめた本が、この1冊です。
フランス料理、日本料理の頂点で修業を積んだ後、父と同じ家庭料理研究の道を歩む人生、テレビでおなじみの笑顔にこめられた「人を幸せにする」料理への思い、ベストセラー『一汁一菜でよいという提案』に至るまでの道のりを綴る。
版元ドットコム 紹介文より
「一汁一菜でよいと至るまで」を読んでみて
ここからは、「一汁一菜でよいと至るまで」を読んだ感想を深掘りしていきます。
本の構成はこのようになっています。
- 料理は一生のもの――父、土井勝の名の陰で
- 料理って、こういうことなんだ――フランスでの料理修行
- 料理の「顔」と「目的」を見極める――「味𠮷兆」学んだこと
- 家庭料理とは、無償の愛です――料理学校で教える立場に
人生が詰まっていますよ!
第1部~第4部、それぞれから印象に残った箇所をピックアップし、お伝えしていきますね。
①おふくろの味
「おふくろの味」という言葉。
実は著者のお父さまの土井勝さんにより、広く普及されたそう。
知らなかった~!
ご存知でしたか?
さまざまな家庭のかたちや多様性が尊重される令和では、もう使わないのかな…どうなんだろう。
とはいえ、当たり前のように存在する言葉でした。
明治生まれの祖母が子育てをしたのは社会的に女性が活躍する以前のこと、十人を育て上げたこの母への思いから父は家庭の味のことを「おふくろの味」と呼びました。
「一汁一菜でよいと至るまで」(新潮新書)土井善晴・著 27ページ
このエピソードを知ると、時代が変わっても「おふくろの味」、やさしい言葉だなあと感じました。
女手ひとつで十人の子育てしていたというから、苦労は大変なものだったでしょう。
そこで活躍していたのが、手打ちうどんの味噌煮込み汁。
つまり野菜もひと鉢に入った「一汁一菜」なんです!
光熱の無駄がなく、栄養面でも問題なし。
合理的な方法だったそう。
自分のために作る料理、家族のために作る料理、作ってもらった料理。
家庭料理は誰かの記憶に残るんですよね。だからこそ、「一汁一菜」というシンプルな方法で、毎日少しずつでも手を動かしたいと思うのです。
②毎日の野菜スープは水で煮る
フランスでの修行時代の著者は、アリックス家というご家庭に滞在しながら、レストランに通う日々を過ごします。
レストランの仕事だけでなく、フランスの家庭料理も知ることになるのです。
そしてここにも、「一汁一菜」のヒントが。
フランスだと、「パンにチーズに野菜スープ」が毎日の食事。
野菜スープの作り方はとてもシンプルで、水から作るのが基本だそうです。
本来は水だけでいいのです。すべての食材から滲み出る水溶液も広い意味でだし汁です。
「一汁一菜でよいと至るまで」(新潮新書)土井善晴・著 69ページ
お味噌汁を作るとき、「出汁」のことを考えると少し億劫になりますよね…。
以前のわたしも、出汁パックを使ったり水出し昆布を試したりしました。
でも土井さんの考えを取り入れるようになってからは、素材から出る味を意識できるように。毎日ちがう味になるのも楽しいですよ。
顆粒だしも使わなくなったし、コストも時間も味も◎!
シンプルな方法は、料理を持続可能にしてくれると感じます。
③「全力でする仕事」と「ええ加減にする仕事」
日本に帰国した著者は、大阪の「味𠮷兆」に入ります。店主は中谷文雄氏。
日本料理界のレジェンドです。
この章にも印象的な文章がありました。
おまけに、丁寧も度が過ぎれば「くそていねい」、真面目も過ぎると「くそまじめ」になるんです。「どんなええことでも過ぎたらあかん」。だめなんですね、なんでもちょうどいいところを、自分で見つけなあかんのです。
「一汁一菜でよいと至るまで」(新潮新書)土井善晴・著 115ページ
がむしゃらに全力で働く姿勢ももちろんですが、味𠮷兆では「ええ加減」という塩梅を学んだというう著者。
この文章を読んだときに、これは家庭料理でも共通だと感じました。
夫婦で仕事が忙しい時期、わたしは少しムリをして料理を頑張ってしまった経験があります。
夫にとっても、頑張りすぎた料理は負担だったよう。
ムリをして作っても、お互い快適じゃなかったんですよね。
そんなときは、「ええ加減」に力を抜くこと!スッと視界が晴れる気がしませんか?
④「おいしそうに見えない」と言われて
味𠮷兆での修行を終えた著者は、料理学校をされていたお父さまの元に戻りました。
そこで日本料理屋での「日本一」の仕事と、「家庭料理」とのギャップに苦しみます。
高みを目指して完璧に調理したいという思いが、雑誌やテレビに仕事の幅を広げても付きまとったそう。
そんな気持ちとは裏腹に、著者に届くのは「おいしそうに見えない」という周囲からの言葉。
この章では、少しずつ考えが変化していく様子が書かれています。
切り揃えられていないものが美しく見えたり、煮崩れた芋の方が事実おいしいこともあることが、だんだんわかってくるのです。それからというものは、わざと太さや大きさを揃えない、盛りつける前に芋は軽く潰すといったことを、あえてやるようになりました。
「一汁一菜でよいと至るまで」(新潮新書)土井善晴・著 172ページ
わが家も夫が料理人という仕事柄、プロの料理と家庭料理の境目がぼんやりすることが多かったのです。くっきり別物だと線を引いてくれたのが、土井さんの考え方でした。
少し不格好でも不揃いでも、それが手料理の味。
すごくラクになりましたよ~!
「料理に失敗なんて、ない」と励ましてくださる土井さんの言葉。
その言葉の背景を知れば、もっと心に響きます。
今回ご紹介したのはごくごく一部なので、ぜひ手に取って読んでみてくださいね。
「一汁一菜でよいと至るまで」まとめ
今回は土井善晴さんの「一汁一菜でよいと至るまで」をご紹介しました。
- 「一汁一菜」への理解が深まる。
- 料理人の仕事が垣間見える。
- 料理を通した海外との関わりを知る。
- 日本料理がどう発展してきたか分かる。
これらを土井善晴さんの視点で読むと、著者の人生に「一汁一菜」へのヒントが散りばめられていたことが見えてきます。
著書2冊で、一汁一菜の取り入れ方からその背景まで、深く理解することができますよ。
料理の悩みが少しでも軽くなるよう、参考にしていただければ幸いです。
ではまたすぐに!
コメント