好きな食べ物が似ていると、その人との距離がぐっと縮まる気がします。
初対面でも、うれしくなっちゃう。
石田千さんの「箸もてば」を読んでいると、そんな気持ちになりました。
本を開けば、ちょっとノスタルジーな暮らしが目の前に広がります。
日常のごはんや、四季の楽しみが綴られたエッセイです。
1日3回のごはん。
自ずと「生き方」も反映される。
でも丁寧さに縛られると窮屈だから、自由でありたいなーと改めて感じさせられます。
料理のヒントも散りばめられた1冊。
滋味深い言葉たちにほっと一息ついたら、台所に立ちたくなってくるんです!
詳しくみていきましょう♪
- 年間100冊読破を継続中。
- 読書は紙の本で楽しむのが好き。
- ブログでは暮らしや食にまつわる本を選書中。
「箸もてば」石田千さん
今回ご紹介する本はこちら。
どんな本?
- 著者:石田千(いしだ・せん)さん
- 定価:820円+税
- 出版社:筑摩書房
- 初版年月日:2022年8月
- ページ数:240ページ
福島県生まれ、東京都育ちの石田千さん。小説家・エッセイストであり、東海大学の教授もされています。
食べることは、いのちへの賛歌。日々の暮らしでめぐり会う四季の恵みと喜びを、滋味深くつづるエッセイ集。
版元ドットコム 紹介文より
読んだいきさつ
読書好きな母から、おすすめされたことがきっかけです。
「料理好きな人に人気らしいよ~♪」とのこと。
著者のことを存じ上げなかったので、どんな料理に出会えるかわくわく。
食べ物エッセイが大好きなんです☆
読んでみるとさすが母…!
好みを分かってくれていたみたいです。
次からは読んでみた感想を、もっと詳しく書いていきます。
「箸もてば」を読んでみて
「箸もてば」は、36編+文庫版書き下ろし4編で構成されています。
著者の自炊の様子や外ごはんの思い出、四季の楽しみが心地よいリズムで綴られています。
言葉がまあるくやさしく澄んでいながら、下町っぽいお茶目さもたまりません!
「もくじ」からもう、食欲がかき立てられてしまうこと必須。
- おべんとさげて
- レバニラ、たそがれ
- 八百万の湯気
著者が食を愛でる気持ちが、伝わってきますよね~!
語感も、かわいい。
もくじから妄想がはかどるよ。
言葉のリズムにのせられて、台所に立ちたくなってくるのがこの本の不思議。
おいしそう!と、そのまま本のメニューを作ってしまったり、しちゃいました。
特にすてきだなーと感じた部分を、お伝えしていきます!
お酢の3種使いがわが家と同じ!
まずは「すっぱい生活」という章から。
酸味が好きなわが家の傾向もあり、読む前からそそられる1編でした。
- 米酢
- りんご酢
- 黒酢
この3種類を常備していると書かれていて、おぉ!と歓喜。
うちもおんなじだー!
読んでいて共通点が見つかると、うれしいものです。
それぞれの活用法や代用品のアイデアも面白い。
甘酢漬け、いいなあ。スパゲティにも、りんご酢かけるんだ!黒酢はすっぱいカラメル、わー、なるほど!
ほかほかの枝豆と、つめたい甘酢漬け。それで、ビールをぽーんとあけるんだよ。仕事の相談ごとの終わりかけにそう思うと、尻がもじもじした。
「箸もてば」(ちくま文庫)石田千・著 28ページ
読んでいると口がキュウッとなり、甘酢漬けをシャクッとかじりたくなります。
前半はこのように、3種のお酢のはなし。
後半のアングルは、著者が冷やし中華を作るシーンです。
黒酢を使って、タレを作るのだそう。
夏場は、あき瓶に、ねり辛子とラー油といっしょにまぜておく。ドレッシングのように、冷やし中華にかける。
「箸もてば」(ちくま文庫)石田千・著 29ページ
お湯をわかし、野菜を刻み、焼豚をスライス。
テンポよく進む調理が小気味いい。
麺を洗う水しぶきや、トマトの艶やかさまで浮かび上がってくるようです。
さいごに、瓶に入れた黒酢のタレをしゃかしゃか振って。
文章からわき立つ臨場感がステキです。
この章を読んで、来年の夏は絶対これを作ろう。定番にしちゃおう。
そう心に決めたのでした。
目を覚ましたいなら、朝ごはん
からだが重く眠い夏の朝。「朝の秘策」という章には、そんな日の著者のお楽しみが詰め込まれています。
ちなみに、わたしの好きな食べ物は「朝ごはん」(笑)。
この章も、わくわくが止まりません。
サンドイッチをかじる。それだけで、びっくりするほど目が覚める。
「箸もてば」(ちくま文庫)石田千・著 167ページ
そう。主人公は、サンドイッチ。
著者は商店街のパン屋で角食を買い、具材を考え、前夜に野菜を洗います。
楽しみは前夜から仕込むのであります。
起きてひと仕事終えた著者は、サンドイッチを作ります。
「レタスは、百万円の札束ほどはさむ」。
…こんなかんじ????!♥
本をマネして、忍ばせたのはマヨネーズとマスタード。
シャクッッと食べてみて納得、レタスは層になっているからこそ、おいしい。
好きなだけははさめるのも、大口を開けてパクつくのも、おうちならではの面白さです。
慎重に両手で持ち、これからからだに入るものを、より目でよくよく見さだめる。思いきり、あーんと口をあける。この行動によって、人体は覚醒をもよおす。
「箸もてば」(ちくま文庫)石田千・著 170ページ
これが著者の「朝の秘策」。
でも朝だけでなく、前日の準備から楽しげな空気が伝わってきます。
著者の料理も文章も、とても自然体。
散りばめられた料理のヒントを拾い集めながら、何度も読み返したくなる作品です。
まとめ
今回は「箸もてば」をご紹介しました。
- 「食」を中心に綴られた、滋味深いエッセイ。
- 料理のヒントが散りばめられている。
- 日常的な料理の風景がすてき。
- やさしくまあるい表現から、お茶目な下町っぽさも感じられる。
- 台所に立ちたくなってくる。
著者がごはんを楽しむ様子は、とても軽やか。
四季を楽しんだり、思い出が交錯したり、わたしたちは食べ物と一緒に歩んでいるんだなーと感じさせられました。
言葉のリズムが映像のように浮かび上がり、いい香りまでしてきそう!
食いしんぼうさん、料理好きさん、ぜひ読んでみてください。
ではまたすぐに!
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