食べることが大好きな人。
おいしそうに食べる人。
おいしいものを心から表現する人。
わたしはこのような人たちに親しみを覚えるし、大切に食べる人は尊敬するし、「一緒に食卓を囲んだら楽しいだろうなあ」と想像してしまいます。
人間味が溢れていてたまらない。
文章でおいしいものを味わいたい。
そんなときにわたしが紐解いてきたのが、「食べ物エッセイ」です。
わたしはこれまで飲食業に携わってきました。
そして夫が料理人という仕事柄、これからも「食」とは縁深い人生になるでしょう。
食関連の本を意識して読んできたこともあり、気付けば本棚には「おいしい本」がズラリ!
この記事では、そんな本たちをご紹介していきます。
著者の趣味趣向や人間らしさが垣間見える、食べ物エッセイを8冊集めました。
- 食べる幸せのお裾分けをもらいたいとき
- 香り立つような表現に出会いたいとき
ぜひ、食いしんぼうさんに手に取ってもらいたいです。
ただし・・・
空腹時には注意!
腹ごしらえをして(それか手元にお菓子を置いて)、いってみましょう。
食べ物エッセイおすすめ8選
今回選んだのはこちらの本たち。
20代前半に夫の料理屋を手伝うと決めてから、勉強も兼ねて読むようになりました。
趣味の要素が大きい、楽しい勉強です♪
- 作り手・食べ手、両方の気持ちを知りたかった。
- もっと料理を好きになりたかった。
- おいしさの表現や語彙を鍛えたかった。
- ただ食いしんぼうとして「食」が好き。
こんな気持ちで読み続けています。
お口に合う物を、探してみてくださいね!
①「食卓の情景」池波正太郎
1冊目は池波正太郎さんの「食卓の情景」。
「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の3大シリーズなど、膨大な作品群を世に残した池波正太郎さん。
エッセイも味わい深い逸品です。
食にこだわりを持ち、真摯に向き合う姿勢が、ひしひしと伝わってきます。
この「食卓の情景」には、
- 旅先の食べもの
- 家族と食のエピソード
- 子供のころの思い出の味
など、著者の人生観がそのまま反映されているよう。
「食日記」という章では、著者の1日の食事を覗くことができ、興味津々で読み進めてしまいます。
第一食(十一時)には、中華ふうのスープへ葱と卵を入れたものと、蜂蜜をかけたトースト二枚だけにしておく。
「食卓の情景」(新潮文庫)池波正太郎・著/366ページ
は、蜂蜜トースト♥
著者との距離が縮まる気がします。
小説とはまた違った、食と向き合う著者の表情が楽しめる作品です。
②「いしいしんじのごはん日記」いしいしんじ
2冊目はいしいしんじさんの「いしいしんじのごはん日記」。
著者が浅草から港町・三崎へ引っ越してからのネット連載が、書籍化されたものです。
港町といえば、新鮮な魚介類。
日記形式で描かれているのですが、日々の献立が食いしんぼうにはたまらない。
たこ刺し、たこマリネ、たこのにんにくいため。きんぴらごぼうにポテトサラダ。びんちょうまぐろのづけ丼。すばらしき海。すばらしき休日。
「いしいしんじのごはん日記」(新潮文庫)いしいしんじ・著/120ページ
たこづくし献立最高!
もー、絶対ビール。
地元の人たちとの交流から、調理の風景、創作活動の様子まで、日々を味わい尽くすエッセイです。
③「洋食 小川」小川糸
3冊目は小川糸さんの「洋食 小川」。
デビュー作の「食堂かたつむり」が大ベストセラーとなった、小川糸さん。
小説では、食堂でのおもてなしを通した人々との交流と癒しが描かれています。
この「洋食 小川」は、著者の台所での日々を綴ったエッセイです。
料理以外の、家事の様子も心地いい。
日記形式になっていて、季節の移ろいを肌で感じることができます。
マドレーヌは、見ているだけで、ほんわかする。
「洋食 小川」(幻冬舎文庫)小川糸・著/34ページ
今回は、金柑を入れてみた。
部屋中に、お菓子屋さんの匂いがしている。
著者の丁寧な暮らしを、飾らない文体で堪能してみてください。
④「おなかがすいたハラペコだ。」椎名誠
4冊目は椎名誠さんの「おなかがすいたハラペコだ。」。
作家、写真家、映画監督として活躍される椎名誠さん。
世界中をパワフルに旅しながら、小説、随筆、紀行文、写真集などを多数発表されています。
わたしはこの「おなかがすいたハラペコだ。」が初読みだったのですが、食べ物の描写が本当においしそう!
一気に好きになりました。
炊きたてのごはんの上にカツオブシとタマネギを炒めて醤油で味つけしたのを惜しげもなく全部ドサッとのせて四人でわしわし食うと、もう何も文句ありません状態になった。
「おなかがすいたハラペコだ。」(集英社文庫)椎名誠・著/15ページ
素朴な懐かしい味はもちろん、ふつうに生きていたら出会わないようなへき地のグルメ、ワイルドなキャンプ飯など、未知の世界もたっぷり詰まった1冊です。
⑤「ことばの食卓」武田百合子
5冊目は武田百合子さんの「ことばの食卓」。
小説家武田泰淳の妻であり、随筆家の武田百合子さん。
処女作の「富士日記」が高い評価を受けます。
わたしも4カ月くらいかけて、じっっっくり読みました。
武田百合子さんの作品を手に取ったきっかけは、料理家さんの愛読書として多く紹介されていること。
雑誌などで目にする機会が多く、とても気になっていたのです。
最初に読んだ作品が、この「ことばの食卓」です。
おべんと御飯(煎り卵ともみ海苔の混ぜ御飯)か、猫御飯(おかかと海苔を御飯の間に敷いたもの)であれば、私は嬉しい。そこに鱈子、またはコロッケがついていたりすれば、ああ嬉しい、と私は思う。
「ことばの食卓」(ちくま文庫)武田百合子・著/48ページ
著者が食べ物と対峙する姿は、少女のようであり大人の色気もあり、人間らしさも感じられます。
文章から放たれる感性を、全身で味わってみてください。
⑥「やっぱり食べに行こう。」原田マハ
6冊目は原田マハさんの「やっぱり食べに行こう。」。
小説家の原田マハさん。
キュレーターという経歴から、アートを題材にした小説の切れ味はもちろん、恋愛やお仕事小説など表現の幅は多岐に渡ります。
小説やアートと同じくらい、「おいしいもの」が大好きなんだそうです!
「やっぱり食べに行こう。」には、著者が取材中に出会った世界のグルメから、懐かしい日本の味、通いたいお店のことなどが綴られています。
マハさんのパワフルなフットワークも必見ですよ!
あざやかな緑色の生パスタにはしっかりバジルが練り込まれ、バジルペーストとオリーブオイルが絡められ、少々のニンニク風味。パルメザンチーズをパラパラふりかけ、一口食べて、泣けてきた。
「やっぱり食べに行こう。」(毎日新聞出版)原田マハ・著/49ページ
世界中を飛び回る著者が、描くグルメ。大好きが溢れていて見どころたっぷりです。
⑦「おいしい日常」平松洋子
7冊目は平松洋子さんの「おいしい日常」。
食エッセイの名手、平松洋子さん。
その表現力にいつも空腹を誘われてしまいます。
食と身体が一体となるような、全身でおいしいもの吸収するような。
体温を感じる表現がたまりません。
読んでいると、とても満たされた気持ちになるんです。
この「おいしい日常」は、著書が日々培った食の楽しみを深掘りするもの。
愛用されている調味料もたっぷり紹介されています。
たらーり濃い緑の雫をひとたらし。すると、皿の上のチーズも切りっぱなしのトマトにも、とたんに勢いのよい芳香が渦巻く。
「おいしい日常」(新潮文庫)平松洋子・著/103ページ
「これは究極の『ソース』だ!」
トスカーナでエキストラバージン・オリーブオイル誕生の瞬間を見た著者。
読んでいてもその芳香が漂ってくるような、食の息吹が感じられる作品です。
⑧「落しぶたと鍋つかみ」本上まなみ
8冊目は本上まなみさんの「落としぶたと鍋つかみ」。
女優の本上まなみさん。エッセイストとしても活躍されています。
親しみやすく、ちょっとお茶目でリズミカルな文体は、癒し度満点。(著者は自称「癒し系」ならぬ「いやしい系」と表現されていますが笑)
「落としぶたと鍋つかみ」は、著者の食いしんぼうっぷりがとても気持ちのいいエッセイです。
親近感を抱いてしまうこと間違いなし。
注文する時に「ドウドウ」となだめてくれる役回りの人がいればいいのですけれど、夫含め他の家族、周囲の知人友人もみな食いしんぼうで統一されているので、適任がいない、いやむしろ大量注文に拍車がかかるという始末なのでした。
「落としぶたと鍋つかみ」(朝日新聞出版)本上まなみ・著/88ページ
あれもこれも食べたくなってしまう外食の記録から、捏ねたり握ったりする料理の様子まで。
ほわ~と立ち上る湯気のような、温かい1冊です。
食べ物エッセイおすすすめ8選:まとめ
今回は、食いしんぼう必見の「食べ物エッセイ」を8冊ご紹介しました。
読み返していると、改めてこう感じました。
何度読んでもおいしい!
どの作品も、作家さんそれぞれの切り口、視点、描写が堪能でき、人間性まで垣間見えるところが魅力。
わたしたちの日々の「食」にも、アクセントを加えてくれます。
お気に入りのおいしい本が見つかれば、食べることがもっっっと楽しくなるハズ。じんわりと幸せな気分に浸ることができますよ。
ではまたすぐに!
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